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おすすめの本:大地の咆哮
■著者紹介・・・杉本 信行(すぎもと のぶゆき)

 1949年生まれ。1973年外務省入省。
 1981年経済協力局技術協力第一課主席事務官。
 1983年在中華人民共和国日本国大使館一等書記官。
 1986年在フランス日本国大使館一等書記官。
 1991年経済協力局国際機構課長
 1993年交流協会総務部長(台湾)
 1996年欧州連合日本政府代表公使。
 1998年在中華人民共和国日本国大使館公使。
 2001年在上海日本国総領事館総領事。
 2005年日本国際問題研究所主任研究員。
 2006年8月肺がんにて永眠。

 ・2004年春、上海の日本総領事館で、一人の館員が、
  このままでは国を売らない限り出国できなくなるとの遺書を
  残して死んだ。私は、そのときの総領事であった。(p6)


─────────────────

●著者は外務省において中国スクールの一員として、
 中国に深く関わってきたキャリア官僚です。

 2005年に、著者が総領事であった上海の日本総領事館で
 館員が中国の諜報活動により自殺したことが発覚し、

 さらには自ら末期ガンであることがわかり、闘病生活の中で
 この本を執筆しています。
 外交官の本音が書かれてあると考えて良いでしょう。


●これまで日本は、日中友好の名のもとに、
 一貫して中国の経済発展のために金を出し、
 国際的にも中国を擁護してきました。

 そして実際に中国が経済発展した根底に
 日本のODAが貢献したことは明らかなようです。

 ・89年6月、天安門事件が起こった。事件後、ヨーロッパ各国は
  手のひらを返すように、対中姿勢を硬化させて経済制裁に踏み切り、
  ココムに関してもより厳しさを増した。・・四面楚歌に陥った
  中国を逆に擁護する立場をとったのは日本だった。(p101)


●また、中国の経済発展にともない民間企業が
 中国に進出しているようですが、
 進出している企業がトラブルにあうことが多いようです。

 それについての記述は、やや他人事のように感じましたが、
 それは外交官には普通の感覚なのでしょう。

 ・大使館に持ち込まれるさまざまな苦情・・・中国企業側が
  判決を履行しない・・・工場を建設していざ操業という段階
  になって、日本企業が移転を迫られた・・・労務管理や売掛金
  回収のトラブルで、日本人が換金されるケース(p165)


●中国が国家として進めてきた反日教育、
 極悪非道な日本人というイメージは中国全土に浸透しており、

 すでに共産党でもコントロールできないくらい
 大きなものとなっているようです。

 さらには、そうした反日教育のために、
 中国指導部は日本に対し、強固な対日政策をとらざるをえない
 状況にもなっているわけです。

 ・日常的にTVドラマや記録映画を通じて、極悪非道な日本人の
  イメージが定着している。・・・そうしたイメージづくりは、
  これまではすべて共産党宣伝部が横断的に行ってきたわけである
  (p223)

 ・中国指導部としては、組織的あるいは偶発的な反日運動が、
  社会の各層に鬱積した不満のはけ口として一般大衆を巻き込んだ
  かたちで発展した場合には、これらのエネルギーが直接党あるいは
  政府批判に向かわないように、強固な対日政策を取る危険性が
  きわめて高まっていると指摘せざるを得ない。(p236)


●日本という国が、経済援助により共産党独裁国家を崩壊させ、
 民主的な国家へ導く深遠な戦略を成功させた国家となるのか、

 それとも、経済援助により敵国を発展させ、
 その国に滅ぼされる愚かな国家となるのか、

 中国へ行ったことがない私は判断できませんが、
 その判断は歴史が示してくれるのでしょう。


─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・文化大革命末期の体験を含む長年の中国勤務を通じ、
  正直「中国に生まれなくてよかった」と思うこともあった。
  (p7)


 ・金を人に貸すならば、あげたつもりで貸さねばならない。
  借りた金は返さないのが原則なのに、返すとは馬鹿げている、
  といった風潮が少なからずある。(p262)


 ・実際、中国の党幹部や役人はすさまじい特権を享受している。
  日本でもマスコミが伝えてはいるが、日本人にはなかなかイメージ
  できないかもしれない。(p220)


 ・胡耀邦は胡錦濤の恩人である。その恩人であり最も親日的であった
  胡耀邦が、個人的な信頼関係を築いたとされる中曽根総理の靖国
  神社参拝問題で批判を受け、その後失脚してしまった。それ以来、
  靖国神社問題は中国の指導者にとり、いわば鬼門となった感がある(p244)

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